「医療・介護政策 総論 ② (日本の医療の特徴(アクセス・クオリティー・コストの両立と将来) ) 」

 

「はじめに」

現在の日本の医療制度は、世界1位の評価です。

 

そして、その日本の医療制度の特徴は、下記の通りです。

 ①  国民全員を公的医療保険で保障(フリーアクセス)

 ②  医療機関を自由に選べます  (フリーアクセス)

 ③  安い医療費で高度な医療(低コスト・高クオリティー)

 ④  社会保険方式を基本とし、皆保険の維持のため、公費を投入



海外の医療事情を見ると、日本以外の国で、アクセス・クオリティー・コストの両立は達成している国はなく、3つのうちの2つが選択されています。



米国では、アクセスとクオリティーを優先し、高コストです。
(例:日本の数倍の医療費(例:虫垂炎手術 250万円)が必要です。)

欧州では、クオリティーとコストを優先し、アクセス制限があります。
(例:手術までの待機時間が長い、専門医に自由に受診できません。)

発展途上国では、医療費は安いものの、医療サービスの質は価格相応です。 


海外の医療事情を見ると分かるように、
本来、アクセス・クオリティー・コストを両立することは不可能です。
では、どのようにして、日本ではそれを達成しているのでしょうか。


日本の医療制度の特徴であるアクセス・クオリティー・コストの背景と、
現在の制度を続けた場合の将来について述べます。
 

〇 アクセス・クオリティー・コストの両立を可能とする背景とは何か?


・ フリーアクセスの背景について

フリーアクセスを成立させている背景は、下記の通りです。

① 医療機関(診療所・病院・救急外来)への受診は、自由です。

② 高額療養費制度により、患者の自己負担の限度額が設定されています。
③ 医療施設・設備は諸外国と比し、非常に多く、病床数は、欧米の1.74倍強であり、CTMRIの設備数は人口当たり世界一です。
④ 医師法には、応召義務の規定があり、正当な事由がない限り、診療は拒否できません。

つまり、日本のフリーアクセスは、希望者は、高額な治療費用の負担を気にせずに、医療機関を自由に受診する事ができ、医療機関側は診療を断れず、また、医療施設や設備も存在していることにより、達成されています。



・ 低コストの背景について

低コストを成立させている背景は、下記の通りです。

① 医療サービスの公定価格は、非常に低くなっています。

例としては、外来受診時の医療費はOECD平均の1/2未満で、一日あたりの入院費用も半分以下です。また、医療手技の公的価格は非常に安価です。

(例:大腸内視鏡検査 米国 50100万円, 日本 約2万円(自己負担3割 6000円))

② 医療サービスは、少ない人員により提供されています。

例としては、人口当たりの病床数は3倍~4倍である一方で、人口当たりの医療従事者の人数は、欧米と比較し、同程度である、つまり、日本の病院は、欧米の1/3~1/4の人数で運営しています。 

日本の低コストについては、医療機関は欧米の1/3~1/4の人数で運営され、医療サービスの公定価格を安価に設定することで達成されています。


  クオリティーの背景について 


クオリティーの背景については、下記の通りです。



① 病床あたり1/3~1/4の人員配置にも関わらず、欧米水準の医療を目指し、なおかつ、それを達成しています。

(日本のがんの5年生存率は欧州より良好です。この事は、グローバル企業において、日本支社は、欧米支社の1/3の人数で同様の業務を運営し、同程度の利益があるのと同じことと思えます。ただし、治療成績に関係しない医療従事者の態度等は除きます。)

② 他の先進国では、入院は比較的短期間であり、急性期の治療が終了すると退院となります。
一方、日本では、急性期の治療が終了しても、退院できる状況にならない限り(=退院後の生活環境が整うまで)、入院を継続することができます。
 

 

つまり、クオリティーについては、欧米と同水準の医療サービスを1/3以下の医療従事者で提供し、また、急性期以降も入院を継続する事で、安定した状態で退院することで達成されています。

これまで話の内容で気づかれたと思いますが、
日本の医療制度の負の側面とは、

① 医療従事者の労働環境が過酷な状況に陥っていること です。

例:医師の当直明け勤務(24時間以上の連続労働)、専門科に常勤医師が1人しかいない救急病院での医師の一年間を通じた緊急呼び出しの待機当番制度(法的には自発的な労働とされており、労働時間ではない。)など)

日本の医療は、非常に安い公定価格で、欧米水準の医療サービスを提供していますが、その一方で、医療機関が経営を成り立たせるためには、医療従事者に過重な労働を強いることが必要になります。

以上をまとめると、 


日本の医療制度は、医療従事者が過酷な労働環境で働き、欧米水準の医療サービスを、1/3以下の人員で、非常に低価格で、大量に供給することで成り立っています。

〇 日本の医療の現行制度を維持した場合の将来について 

次に、日本の医療の現行制度を維持した場合の将来について述べます。

日本では、アクセス・クオリティー・コストの両立を医療従事者の献身的な労働により達成することに成功しました。
しかし、欧州では、無制限にサービスの供給を増大させることができないため、アクセスやコストによる制限を設ける必要があります。
結果、すべての人に、必要とする医療サービスを提供する事はできない事態が生じます。


そのため、自然に医療サービスの適応範囲についての国民的な協議が必要となり、公的な医療給付、及び、付随する介護給付には、生命維持に必要であっても、必然的に一定の制限が設けられることになります。
(例:公的負担による血液透析の年齢制限など)
 

一方、現在の日本では、年齢・病状に応じた医療給付の制限はなく、医師には応召義務があり、医療給付を制限する事はできず、必要に応じて、保険適応内で可能な限りの医療給付がされています。


(* 応召義務は、正当な事由があれば、医療給付を断ることができるが、正当な事由の具体的な内容は不透明であり、健康被害が生じた場合の責任の所在については明示されていないため、結局、断れず、現場では可能な限りのことをすることになります。)

介護制度も、医療と同様に必要に応じて給付する理念で策定されており、本人負担は現役世代に転嫁され、受益者負担は少なく、無制限に給付が拡大する構造になっています。 

現行の制度を維持した場合、将来的には、下記のことが生じます。

① 高齢化と医療の高度化により、医療サービスの需要は増加しつづけ、医療サービスの供給は、人々が必要とする分だけ、最大限に供給されます。

② 医療サービスの供給を増やすためには医療従事者の増員が必要ですが、少子化が進行しており、国内の労働力は不足することが予想されます。

(* 医療の高度化は、医療業種を専門化、細分化させ、同一疾患の治療においても、以前より、医療サービスの総量を増やします。)

③ 財政の硬直化が進行します。

以上の事態が生じます。



医療・介護は、エネルギー・食糧政策・少子化対策・教育・科学技術等と比べると、優先順位はそれほど高くありません。
医療、及び、介護に振り分ける事のできる日本の国力には限度があり、将来的には、アクセス・クオリティー・コストを制限し、最適化していく必要があるでしょう。



「まとめ」


・日本の医療制度は、世界第一位です。

・日本の医療制度の背景には、医療従事者が過酷な労働環境で働き、欧米水準の医療サービスを、1/3以下の人員で、非常に低価格で、大量に供給している事があります。

・将来的に、アクセス・クオリティー・コストのすべてを両立し続けることはできず、適正化が必要です。ただし、医療費はこれ以上は増やしづらいため、工夫が必要です。

 

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プロフィール

服部 泰輔

Author:服部 泰輔
初めまして。服部 泰輔と申します。
本研究所は、日本の社会問題の 解決策を提案する政策研究所です。

本拠地は、愛知・岐阜になります

現在の日本では、高齢者向けの福祉を中心に拡充しつづけた結果、
教育・家族・労働者向けの予算は先進国の最低水準となっています。
また、大学の予算(科学研究予算)も減額が続いています。

これは、将来への投資を限界まで切り詰め、高齢者福祉に充てている末期的な状態と言えるでしょう。

さすがに、
この状況を放置しつづけると、
日本は破綻してしまいます。

将来的には、政党を立ち上げ、専門家・学識者で構成された政党を作りたいと考えています。

ですが、最終目的は社会の修復ですので、手段にはあまりこだわらずに状況に応じて柔軟に考えていきます。

気が向いたら、ご協力いただければ幸いです。

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