「日本人間ドック学会 2017年」
「厚生労働省 保険医療 2035」
本日、厚生労働省の2035年の保険医療ビションについての話がありました。
これについて検討してみます。
はじめに、日本の社会と医療の状況を見ると、
社会の状況
① 少子高齢化は進行する (現役と高齢世代の比率は、2.4人対1人から、1.7人対1人へ。)
② 高齢向けの社会保障を増やした代わりに、子ども・家族向け・教育費・科学研究費等は減らした、または、増やせなかった。
医療給付の基本方針
③ 医療は必要なものを必要な分だけ供給する。
④ 本人の負担はどれだけ医療費がかかっても定額(数万円)まで。
必要なものを必要なだけ供給したら、医療費がものすごく増えた。
医療費への対応として、
④ 医師の技術料を減額した。
技術料は、他の先進国の3〜10分の1以下の水準。再診料は、マッサージ店以下
⑤ 医療従事者の労働環境は劣悪になった。例として、勤務医の30時間の連続労働など。
⑥ 薬剤費は、他国との兼ね合いがあり、極端に安くできない。日本だけ特別価格で買えないため。
以上です。
今の医療制度をそのまま維持しても、高齢化と共に、医療費は増えるため、維持可能かはかなり怪しいです。
では、保険医療 2035を見てみましょう。
〈目標〉 世界最高水準の医療を目指す。
→ 世界最高の医療には、世界最高の費用と労働力が必要です。また、高齢化率も世界一であり、負担する現役世代と医療従事者には、世界一の負担がかかります。
〈保険医療のパラダイムシフト〉
① 量の拡大から質の拡大へ
→ 量は自然に拡大します。
さらに質も改善するのであれば、莫大な財源はどうするつもりですか?
いつものように、選挙権のない子どもの社会保障を削減して、予算を捻出しますか? もう、あまり削れるところもありませんが。
② インプット中心から、患者にとっての価値中心へ
→ 画一的な医療から、患者の各人の価値観に合わせると、労働コストは増大します。医療現場には余力はありません。
③ 行政による規制から当事者による規律へ
→ 話して理解してもらえる人は初めから問題になりません。話して分からない人が問題になります。患者の希望を断るのは、相当のストレスが両者にかかるため、制度的に決めてしまう方が無難です。
④ キュア中心からケア中心へ
→ キュアからケアにすると、対象範囲が広くなりますので、さらに、医療費の投入が必要です。
〈基本理念〉
① 公平・公正
将来世代も安心・納得でき、年齢等により、健康水準に差を生じさせない。
→ 老化するにつれて、健康の維持費は増えます。現在、現役世代の保険料の4割以上が後期高齢者への医療費の補填に使われているのをご存知ですか? 高齢化が進むと、医療費の世代間移転がさらに酷くなります。
その他も色々とありますが、
全ての方針が拡大の方針ですので、財政負担はかなり増大する事が予測されます。
財政規律の話がありますが、責任者は全く理解してないでしょう。
これを作った人々は、性格が素直で真っ直ぐな人々なのだとは思いますが、以下の事を理解していないように思えます。
① 国力には限界がある
② 医療・介護は社会福祉であり、予算配分の優先順位は高くない。
③ 日本の少子高齢化は極めて深刻である
④ 何かを増やすなら、誰が負担する(犠牲になる)のかを決めなければならない
この方針だと、日本は維持できなくなるか、若い人の負担が激増し、大変ひどい事になるでしょう。